研究内容
研究−1
多くの有効な薬剤によってHIV-1に感染してもエイズを発症することはなくなり、HIV-1感染症はコントロール可能な慢性疾患となってきました。しかし、ウイルスは体内から完全には排除されていないため、服薬を止めるとウイルスが再び増殖し、結果、一生涯服薬が止められないのが現状です。そしてこの問題の解決には、そもそもウイルスはどこに潜んでいるか? を解明する必要があります。そのために私たちは、HIV-1の主要標的細胞の一種である、単球・マクロファージに着目した研究、特に、どのようなタイプの単球およびマクロファージにHIV-1が潜伏・持続感染し得るか?について解析を行なっています。
研究−2
マクロファージはほぼ全ての組織に存在する血液細胞ですが、近年、大きなパラダイムシフトが起きています。これまでマクロファージは末梢血中の単球から分化し、時間と共に死滅するため、それを補うように、単球からマクロファージへの分化が繰り返されると考えられてきました。しかし近年の多くのグループの解析から、この考えと矛盾するように、成体組織中には、胎児期に発生したマクロファージが数多く残っていることが分かってきました。私たちはその意義を明らかにするため、これら起源が異なるマクロファージは機能も違うのか?胎児由来マクロファージは増殖できるのではないか?という点に着目
して研究を行なっています。
研究−3
近年、新たな細胞間コミュニケーション手段として、細胞膜が細長く伸長して遠隔の細胞同士をつなぎ、さらにはミトコンドリアの細胞間移動をも可能にする、tunneling nanotubes(以下、TNT)が注目されています。私たちはその構造的な特徴から、TNTがウイルスの細胞間伝播を媒介するのではないかと考え、HIV-1および近縁のヒト成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-1)について実証を試みています。。同時に、なぜTNTは時として細胞数個分の長さにまで伸びることができるのか?どのような分子がその過程を担うのか?その伸長により細胞自体の機能はどうなるのか?についての解析を行なっていま
す。
Division of Infection and Hematopoiesis
Joint Research Center for Human Retrovirus Infection(Suzu Lab.)
2022.4.1